石窟寺院。洞窟に安置された神秘的な仏像や仏教彫刻、絵画は人々の関心の的になり、インドや中国では観光地にもなっている場所がいくつもあります。
そのような石窟寺院を一度は見てみたい…そう思いつつも日頃の忙しさからその願いを叶えられていない人も多いのではないでしょうか。
しかしそんな人にも朗報、壮大な石窟寺院を堪能できるという珍スポットが日本にはいくつも存在します。
今回はそのような珍スポットとして扱われることも多い石窟の1つである、ガン封じの無量寺を紹介します。
石窟寺院なんて日本で見られるんですか?
あなたは海外ばかりに目を向けて、自国のことは何も知らないのね。
日本にも石窟寺院を堪能できる珍スポットがあるのよ。
この記事を読んで、少しは自分の国のことを学んでね。
いざ、無量寺へ
今回紹介する珍スポット・無量寺(むりょうじ)は、愛知県蒲郡市にあります。
この日は自宅のある浜松からオートバイで国道1号、23号を経由して目的地へと向かいます。
冬の寒空の下、1時間半ほどかかって無量寺へと到着、駐車場にオートバイを駐車します。
無量寺の駐車場には「蒲郡市西浦不動 ガン封じ寺」と書かれた真っ赤な幟。この無量寺は「ガン封じ寺」の通称でも知られ、ガンの予防・治癒の御利益が有名で全国から参拝者を集めるお寺です。
平安時代に創建された古刹ですが、ガンの御利益で知られるようになったのは比較的最近。数十年前に町内で胃がんと診断された女性が、お参りしてしているうちにガンが完治したことから、ガンに御利益があるお寺ということになり、マスコミにもたびたび取材されるようになったということです。(「東海珍名所九十九ヶ所巡り」(大竹敏之 著 デイズ/中部経済新聞社 刊)p.70)
いくつもの幟が建てられた参詣道を歩いていきます。冬だったので木々に彩りはありませんが、春になればきっと緑色の葉が生い茂って生命の息吹きを感じることができるでしょう。
少し歩くとお釈迦様の教えを表す五色幕が掛けられた古風な山門。ここからいよいよ境内へと突入していくことになります。
山門と同じく五色幕が掛けられた本堂は伝統的な寺院形式のもので立派な風格があります。
年が明けて間もないこともあり、多くの参拝者で賑わっていました。
平安時代に創建された愛知県蒲郡市にある無量寺は、「ガン封じ寺」の通称でも知られ、ガンの予防・治癒の御利益により全国から参拝者を集めている。
ガンを封じてくれるなんて、すごく頼もしいお寺だね!
千仏洞めぐり
ガンの御利益が有名であるという、一聞珍スポットとは無関係と思われそうな無量寺ですが、お寺に付属している千仏洞めぐりが、この場所を独特・奇抜な場所としています。
入口
早速その千仏洞めぐりというものを見るために、本堂横にある入り口へと向かいます。
千仏洞めぐりについては、入り口に以下のような説明。
- 日本最初 千仏洞めぐり
- 中国の敦煌・洛陽・蘭州の石窟寺院をモデルにした日本では珍しい洞窟めぐりです。
- 入場無料
どうやら中国にある石窟寺院をモデルにした、日本では珍しい洞窟めぐりがこのお寺の見どころの一つであるようです。しかもなんとそれが入場無料!これは入らざるを得ませんね!
高鳴る期待を胸に千仏洞へと足を進ませると、そこには驚愕すべき光景が筆者を待っているのでした…
厄除け不動明王
∑(๑ºдº๑)!!
暗っ!外とは打って変わり、千仏洞の内部を照らすのはロウソクやランプと大変幽々たるものとなっており、神秘的な雰囲気が醸し出されています。
そしてそんな千仏洞で初めに邂逅したのは、ロウソクの灯に照らされながら、火炎光背をまとい手には剣をもって鎮座する厄除け不動明王。薄暗く神妙な雰囲気にあるのが相まって、非常に厳かな印象です。
通路
通路の照明も天井に吊るされたランプでこれまた薄暗く、日常からは隔絶された非現実的な雰囲気を呈しています。
しかもこの通路、壁もただの壁ではなく、何かが彫られているようです。いったい何なのでしょう、薄暗い照明の中で目を凝らしてその正体を見極めることにします。
∑(๑ºдº๑)!!
仏様!?薄暗い通路の壁にはなんと大量の仏様が彫られているようです。
そう、これこそ入口の説明にもあったように、千仏洞めぐりがモデルとした中国の石窟寺院でも見られる磨崖仏なのです。
薄暗い空間でわずかな照明に照らされた、たくさんの磨崖仏が見せる光景はまさしく神秘的、思わず目を奪われてしまいます。
磨崖仏(まがいぶつ)は、石仏の一種で、自然の岩壁や露岩、あるいは転石に造立された仏像である。
(wikipediaより抜粋)
また壁には何枚もの仏教関係の絵がかけられていました。中にはきらびやかな装飾に身をまとい女性的な雰囲気にある仏様の絵といったものも。こちらも磨崖仏とともに千仏洞に非現実的な雰囲気を加えているようです。
中気封じ仏
通路を進んでいくと、磨崖仏はまだまだあります。
突き当たりの壁にあったのは、供えられた色とりどりの花のもとで、他より一段と大きく彫られて中央に鎮座する中気(脳卒中)封じ仏と、その周りを囲うたくさんの磨崖仏。非常に崇高な姿をされており、一種畏敬の念を感じてしまいますね。
大日如来
さらに進んでいくと、最後に1つの部屋にたどり着きます。ここもロウソクにランプとこれまた薄暗い。
おや、よく見ると部屋の中央に誰か坐している様子。
こんな暗い空間に落ち着いて座っていられるとは、きっとよほどの器量の持ち主であることが予想されます。
いったいどんな人なのでしょう、おそるおそる近づいていきます。
∑(๑ºдº๑)!!
なんと部屋の中央で堂々たる姿で坐していたのは、金色の大日如来像なのでした。そりゃこんな薄暗い空間でも落ち着いて座っていられるわけだな…
紹介の立札によると肩こりや足腰痛封じに効果があるということで、体の気になるところを撫でて祈ると御利益があるそうです。
部屋の壁
あたりを見回すと、通路と同じように部屋の壁にもたくさんの磨崖仏。これだけたくさんの仏がいるのが千仏洞と呼ばれる所以でもありましょう。ロウソクに照らされた摩崖仏はここでも非日常的空間を作り出すのに大きな役目を果たしています。
供養菩薩
大日如来像の左右後方には、異国風の格好で青年のような容姿をした仏像が、磨崖仏を背にして立っているようです。
立札の説明によると、これらの左右の像は中国敦煌の供養菩薩をモデルにしたものということ。手を軽く宙に挙げた姿は、まるで参拝者を優しく迎えてくれるようにも思えます
ガンダーラの佛
一通り部屋を見終わって、さて戻ろうとすると、ここで思わぬ不意打ちに遭うことになりました。
∑(๑ºдº๑)!!
これはデカい…!なんと大日如来の向かいには、これまで見てきた中でも特大級の磨崖仏が彫られていました。
法衣に身をつつみ、その表情は目を閉じて悟りを開いたことを示すように大変澄んだものとなっております。
幸せを招くインドのガンダーラの仏ということで、仏の手に自己の手を合わせて祈ると御利益があるそうです。
御利益にあやかりたい筆者も仏様の手にそっと自分の手を添えて、今後の幸せをお祈りしておきます…
無量寺の見どころの一つが中国の石窟寺院をモデルにしたとされる千仏洞。ロウソクやランプで照らされた幽玄な洞窟には仏像はもちろん、たくさんの磨崖仏が安置されており、神秘的な光景を呈している。
まさか愛知の三河で中国の石窟寺院にあるような摩崖仏を見られるなんて思ってもいなかったわ!
その他
このように異国風の千仏洞が大きな見どころとなっている無量寺ですが、境内にはその他にも特徴的な見どころがいくつかありました。
ガン封じ堂
そのような見どころの一つとして挙げられるのが、ガンの予防・治癒に御利益があるとされるガン封じ堂。
部屋の内外には、ガン封じを願うたくさんの絵馬が掛けられていました。
絵馬には人の絵が描かれており患っているガンの部位に丸をつけて祈願するようで、参拝者の治癒を願う強い思いが伝わってきます。
ぼけ封じ仏
また他にはぼけ封じ仏を祀っている小屋。ガン封じ以外にもぼけ封じという御利益があるようです。
小屋の中で祀られている仏像はマジックペンで書かれたような顔をしていて、ちょっと可愛いらしい…
弘法大師像
本堂の前には世界平和と彫られた台座の上に堂々たる姿で立っている弘法大師像。
参拝者一人一人を温かく見守ってくれているようです。
身代り滝不動
たくさんの岩が組まれた岩場と、その中から流れ出る滝、そしてその滝の上に立つ仏像がありますが、こちらは身代わり滝不動ということ。
滝からたまった水を柄杓でくんで手を洗うこともでき、たくさんの参拝者が御利益にあやかろうとしていました.
滝の上には厳かな姿で坐する不動明王と、二人の童子が立っています。特にご由緒などの説明はないようでしたが、滝の水で身を清めておけば、いざというときに難を逃れることができるといったところでしょうか…
日本大雁塔
そして思わず目が行ってしまうのが、境内の端の方にありながら主役の本堂よりもずっと高い日本大雁塔。
玄奘三蔵ゆかりの中国西安の仏塔を3分の1の大きさに復元したものということで、その大きさに加えて異国風の様相を呈する立派な建物は参拝者の注目を集めていました。
千仏洞以外にも、ガン封じ堂、ぼけ封じ仏、弘法大師像、身代り滝不動、日本大雁塔などの見どころがある。
日本大雁塔を見たときは思わず中国に来てしまったのかと思ったわい。
まとめ
今回紹介した珍スポット・無量寺は、ガン封じのお寺として全国的に有名なお寺であることはもちろん、たくさんの磨崖仏が安置された千仏洞は不可思議な光景を呈していて、珍スポットファンを含め多くの参拝者を集めています。
ガン封じの御利益を求める人も、千仏洞で神秘的な気分に浸りたい人も行って意義のあるお寺であると言えるでしょう。
同じような珍スポットの石窟である風天洞やハニベ岩窟院と比較すると千仏洞のほうが短い洞窟ですが、それらとはまた違った神秘的な光景を呈していて、また付近にも他の珍スポットがあるため併せて行きやすいという利点もあります。
ガン封じ寺の幽玄な石窟から感じるロマン、気になる方はぜひガン封じの無量寺へ行ってみてください!
- 平安時代に創建された愛知県蒲郡市にある無量寺は、「ガン封じ寺」の通称でも知られ、ガンの予防・治癒の御利益により全国から参拝者を集めている。
- 無量寺の珍スポット的な見どころの一つが中国の石窟寺院をモデルにしたとされる千仏洞。ロウソクやランプで照らされた幽玄な洞窟には仏像はもちろん、たくさんの磨崖仏が安置されており、神秘的な光景を呈している。
- 千仏洞以外にも、ガン封じ堂、ぼけ封じ仏、弘法大師像、身代り滝不動、日本大雁塔などの見どころがある。
訪問日:2022年1月10日
詳細情報
- 住所 :愛知県蒲郡市西浦町日中30
- アクセス:名鉄蒲郡線 西浦駅から徒歩約5分/東名高速道路 音羽蒲郡ICより約18km 30分
- 営業時間:9:00~16:00
- 休日 :無休
- 料金 :無料
- 駐車場 :無料
- 問合先 :0533-57-3865
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