首都・東京を抱える湾で、船舶の交通の要所として人々の暮らしを産業を支えている東京湾。江戸前寿司などからもわかるように古来から水産物の水揚げも行われ、フェリーや水上バスなどのレジャーでも人々に親しまれています。
このように我々の生活を密接に支えてくれている東京湾ですが、なんとその沿岸地域に巨大な観音様が立っている珍スポットがあるというのです。
今回はそのような珍スポット・東京湾観音について、実際に訪問した際の記録をもとにご紹介いたします。
東京湾沿岸に巨大な観音様なんてあったら大騒ぎですよ?
ところがそのような場所が実際に存在しているのよ。しかも巨大でありつつ首都圏のほとんどの人が知らないほどひっそりとね。
いざ、東京湾観音へ!
今回紹介する珍スポット・東京湾観音は、千葉県富津市小久保にあります。この日は東京の自宅から首都高-東京湾アクアライン-館山自動車道を経由して目的地へと向かいます。
ナビに従い田舎道を走っていると、「東京湾観音表参道」と書かれた大きな看板が見えてきました。思わず付近に愛車を駐車して記念撮影してしまいます。
「高さ56mの大観音」と心躍るような言葉が記載された看板もあり筆者の期待のボルテージは刻々と高まっていきます。
これらの看板が置かれた入り口から、観音様が鎮座している山頂までの1500mをオートバイで一気に駆け上がるとそこには驚愕の光景が立ち現れてくるのでした…!
∑(๑ºдº๑)!!
山道を走り抜けて行きついた頂上には、期待通り真っ白で巨大な観音様が堂々と立っているのでした!かつてから噂には聞いていた念願の観音様であったため、この日の筆者のテンションは序盤からすでに頂点に達していました。
この巨大な観音様は、果たして我々にどのような体験をさせてくれるというのでしょうか…!?
- 高さ56mもあるとされる真っ白で巨大な東京湾観音は、千葉県富津市小久保に堂々と存在している。
東京湾沿岸にこんなに巨大な観音様が立っているなんて、初めて知ったなあ。
境内とご由緒
いったいこの巨大な観音様は何なのかと見まがえてしまいそうになりますが、実はこの観音様と観音様がたつ敷地一帯は東京湾観音というれっきとしたお寺なのです。
観音様が立っているのは千葉県ですが、東京湾を一望できる風光明媚な場所に立っているため、その名称は東京湾観音ということ。千葉県にあるディズニーランドが”東京”ディズニーランドを名乗っているのと似たようなものでしょうか…
このお寺を拝観するには、手前にある社務所で拝観料を支払う必要があります。大人は一人500円だということで、お寺の方に拝観料を奉納し、パンフレットをもらいます。
拝観料を奉納すれば巨大な観音様を四方から眺めることができるし、境内にも見どころもある、そしてなんと高さ56m、20階もある観音様の頭頂部まで胎内めぐりもできるということで、これを拝観しない手はありませんね!
境内
早速境内に入って観音様をじっくりと堪能していくことにします。観音様の前方には撮影ポイントを示す看板が立っているため、まずはオーソドックスにこの地点から観音様を眺めてみましょう!
おー!気がちょっと邪魔ですが、正面から眺める観音様は非常に崇高な姿をしておりますね!そして間近で見ることでその観音様の巨大さを改めて実感します。
左右や後方から見る観音様の姿もこれまた趣き深くてよいですね。後方にはたくさんの穴のようなものが開いていて、なぜ穴をあけているのかと思いました。(後に観音様の胎内めぐりをすることで、これは観音様の内部とつながる窓であることがわかりました。)
神社や寺院の絵馬にはそのお寺のシンボルが記載されていることはよくあることですが、例にもれずにこのスポットにおいても東京湾観音が富士山とともに描かれています。
さらに観音様の後方には東京湾を一望できるという展望所があります。訪問した日は曇りなのでちょっと残念ですが、せっかくなので景色を見てみることにしましょう。
おー!緑生い茂る岬にかなたまで広がる東京湾、そして地平線まで見渡せてこれまた爽快な景色ですね!晴れた日はさらに素晴らしいこと間違いなしでしょう!
ご由緒
境内を散策していくと、観音様の正面や足元には世界平和と大きく書かれた石板が立っておりました。
よく見るとWorld Peaceと英語でも書かれており、日本のみにとどまらないグローバルな視点からの平和を目指していることが見て取れますね。
なぜこれほどまでに世界平和を推しているのか?その答えは、この観音様建立の経緯にありました。
建立の経緯については境内のご由緒からもわかりますが、当時材木商を営んでいた宇佐美 政衛氏が第2次世界大戦の悲惨な被害を顧みて、2度とこのような戦禍が起こることがないように、全世界の戦争殉難者の霊を祀るとともに戦争のない世界平和を祈念して私財にて建立したのがこの東京湾観音ということです。
境内には宇佐美夫妻の像やその功績をたたえる功績碑が立っておりました。
そして、この宇佐美氏の理念に共鳴して実際に東京湾観音の原型を制作したのが、宇佐美氏と同郷の千葉県人であり彫刻家の長谷川 昂氏です。
長谷川 昂氏は紫綬褒章を初めとして数々の賞を受賞し、出身地鴨川市の名誉市民となっており、現代の円空と表されるほどの有名な彫刻家です。境内や観音様の胎内には、この長谷川 昂氏の様々な作品が鎮座しているということ。
説明板のすぐ近くには早速長谷川 昂氏の作品がありました。浦島太郎君ということで、真っ白で静かさがあると同時にどことなく温かさを兼ねそろえているのが特徴的ですね。
また境内に設置されている説明板によると、この東京湾観音は日本における大仏巡礼発祥の地ということで、これは1300年の日本における巡礼史上、初めての巡礼ということです。
大仏巡礼という概念があることと、まさかこの東京湾観音がその発祥の地であることを筆者はこの日初めて知りました。おそるべき東京湾観音!
- 巨大な観音様と観音様がたつ敷地一帯は東京湾観音というれっきとしたお寺である。
- 材木商を営んでいた宇佐美 政衛氏が第2次大戦の悲惨な被害を顧みて、全世界の戦争殉難者の霊を祀るとともに世界平和を祈念して私財にて観音像を建立した。
- 宇佐美氏と同郷の千葉県人であり彫刻家の長谷川 昂氏が観音様の原型を制作した。また境内や観音様の胎内には氏の様々な作品が鎮座している。
珍スポットと聞くと軽い場所に思いがちだけど、成立の経緯を調べてみると、大変しっかりしている場所も多いわよね。
胎内めぐり
境内を一通り見終わったところで、いよいよ待ちに待った観音様の胎内めぐりをしてくこととしましょう!
入口は観音様の後ろ側の足元。こま犬や小型の観音様が守るようにして入口脇に立っています。
観音様の胎内に入ると見えてくる最初に入る空間。観音様の巨大さのわりに、中は割りと落ち着いた様子であるようです。
東京湾観音の建設時の写真や、各階に何が鎮座しているか記載された資料もありました。牛久大仏と異なりエレベーターもないため、地上から50m以上ある頭頂部の20階まで、324段の階段を上がっていくことになります…!
階段はこのように観音様胎内で大きく螺旋を描いていて、上がっていく途中には仏像を初めとしてたくさんの見どころが鎮座しています。
壁はこのようにコンクリート剝き出しの状態で、外を望む穴がいくつも開いております。夏場だったため、通路に扇風機が置いてあるという行き届いたご配慮にはただただ感謝しかありません。
そして壁には教訓的な言葉がいくつも貼られていました。どれもこれも身に染みてくるような言葉ですが、開祖である宇佐美氏が書かれたものでしょうか?
また観音様の中心を貫く大きな柱や壁にはところどころで穴が開いており、中には長谷川昂氏のものと思われる様々な仏像が鎮座しています。一つ一つ注意深く見ていくと、そこには思わずツッコみたくなる様なものまで混じっています…!
例えばそれはこの「マリア観音」、説明には「慈愛に満ちたイエスキリストの聖母の如く子供を育む、母の強き優しさの象徴です。」と書かれていますが、いつマリア様が観音様と結びついたんだ!と思わずツッコみを入れたくなりますね。
さらにツッコみたくなるのは、観音様胎内の柱や壁に時々貼られている緊急連絡先。いったい何が起こるっていうんだ!?観音様の胎内で天変地異でも起こるのか!?
他にも小型で黄金の観音様が大量にガラスケースで飾られていたりします。東京湾観音に祈り願いが叶った人の奉納物といったところでしょうか。
上層階になってくると、観光施設のように外を展望することができるようになります。例えば、12~13階では観音様の腕の上から外の景色を眺められるという腕展望。東京湾や海水浴場を眺められ、天気がよければスカイツリーや富士山も見えるということです。
腕展望へとつながるコンクリート製の階段。光のさすほうへと進んでいくと、そこには海や緑が広がり爽快な景色が目の前に展開されてきます。
ものすごく強いがガンガンと吹きつけてきます。レインボーブリッジや東京湾アクアラインなどもそうですが、湾岸地域は非常に風が強いことが多々あるようですね。
しかし、展望施設には鉄格子が設置されているため転落の危険性なく安心して景色を眺めることができますね。
他にも観音様の鼻の穴の部分や、白毫と耳の穴などからも外を展望できるということ。
このような爽快な景色が、観音様の大切な顔の部分から眺めているのだと思うと、ありがたいことこの上なしですね。
諸願記帳所なんていうものもあり、ノートには多くの参拝者のお願いごとが書かれていました。傍らに貼られている格言がこれまたよろし。
最上階に近づくにつれて螺旋階段の道幅はどんどんとせまくなっていき、梯子なども登場してきます。
夏場で汗をかきながら上り、ようやくして最上階の20階に到着。ここには観音様の頭部や賽銭箱、格言などが設置されておりました。頭頂部ということで、中は非常にせまい空間となっています。
途中見たいくつかの展望所とは異なり、ここでは外へとつながる穴は頑丈に閉じられていて、観音様の頭頂部にでることはできないようです。
しかし日常の忙しさや煩わしさなどを忘れて20階まで上り切った筆者の心は自然と洗われているようでした。この新たな気持ちを胸にして東京湾観音のすばらしさを噛みしめながら、観音様の頭頂部を後にしました。
- 地上から50m以上ある20階まで階段で上がっていくことで、観音様の頭頂部まで胎内めぐりすることができる。
- 観音様の腕や耳、白毫から外の景色を展望することができる。
観音様を眺めるだけでなく、胎内めぐりもすることができるなんて夢のような場所だなあ。
まとめ
今回紹介した東京湾観音は、戦争のない世界平和を標榜する立派な観音様であると同時に、現代にありながら巨大な観音という特異性と東京湾沿岸というその予想だにもしない立地という点も相まって、珍スポット性も兼ねそろえた場所でした。
自分は東京出身ですが、このように巨大な観音様が東京湾沿岸に立っているとは数年前に初めて知りました。首都圏に居住している方でも意外に知らない人は多いと思われるため、この記事をきっかけにしてその存在を知っていただけたのなら幸いです。
富津市にはこれ以外にも圓鏡寺や岩谷観音堂やぐら群などの珍スポットがあるため、充実した珍スポットDayを過ごすことは容易ですね!
世界平和を標榜する巨大な観音様から感じるロマン、食指をそそられた方はぜひ東京湾観音を巡礼いたしましょう!
- 高さ56mもあるとされる真っ白で巨大な東京湾観音は、千葉県富津市小久保に存在している。
- 材木商を営んでいた宇佐美 政衛氏が第2次大戦の悲惨な被害を顧みて、全世界の戦争殉難者の霊を祀るとともに世界平和を祈念して、私財にて観音様を建立した。
- 宇佐美氏と同郷の千葉県人であり彫刻家の長谷川 昂氏が観音様の原型を制作した。また境内や観音様の胎内には氏の様々な作品が鎮座している。
- 地上から50m以上ある20階まで階段で上がっていくことで、観音様の頭頂部まで胎内めぐりすることができる。
訪問日:2023年7月15日
詳細情報
- 住所 :千葉県富津市小久保1588
- アクセス:館山自動車道 富津中央ICより約4.5km 10分
- 営業時間:8:00~17:00(受付は16:00まで。また季節により変動あり)
- 休日 :年中無休
- 料金 :大人 – 500円/中学・高校生 – 400円/5歳~小学生 – 300円
- 駐車場 :有(無料)
- 公式HP :http://www.t-kannon.jp/
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