神社や寺院などへ参詣すれば鳥居や本堂の両側などに必ずといっていいほど鎮座しているこま犬。獅子に似た想像上の生き物で、起源はペルシャやインドにおけるライオンにも遡れるという歴史あるものです。
日本人にとっても身近であるこま犬ですが、その中でも世界一と評されるものがなんと岐阜県瑞浪市にあり、その大きさや外観、鎮座する位置などから、それはまた一種の珍スポットとしてカテゴライズされることもあります。
そこで今回は、そんなユニークで珍スポットとしての一面ももつ世界一の美濃焼こま犬についての話をしようと思います。
神社や寺院にあるこま犬なんて、当然すぎて気にとめたこともなかったです。
本当にあなたは物事に対して謙虚な姿勢を示すことができないのね。
一概にこま犬といっても、その大きさや形状、材料など様々な側面からアプローチすることができるのよ。
この記事を読んで少しは反省してね。
2つの国道結節点に鎮座するもの
今回紹介する珍スポット・世界一の美濃焼こま犬があるのは、岐阜県瑞浪市の国道363号と419号の結節点。この日は土岐アウトレットモールでショッピングをした帰り道に立ち寄りました。
上記写真がそのスポット付近の光景。日が傾いていることもあり、国道標識が美しく映えていますね。一見、ごくありふれた田畑に面した田舎道のようにも思えますが、実は遠目ながらすでに異変は起こりつつあったのです。
∑(๑ºдº๑)!!
なんと、2つの国道の結節部分には、筆者が乗車してきたオートバイをはるかに上回る大きさのこま犬が鎮座していたのです。こんな何の変哲もない田舎道になぜと思われてしまうかもしれませんが、これはまぎれもなく現実の出来事。
そう、これこそ1300年の歴史を誇る美濃焼の陶芸文化が生み出した世界一の美濃焼こま犬なのです!
世界一の美濃焼こま犬が鎮座するのは、国道363号と419号の結節点。
こま犬に目を取られて運転をおろそかにしないようにね!
世界一の美濃焼こま犬との邂逅
愛車とこま犬の記念撮影後は、オートバイを邪魔にならない道路脇へ停車。近くの坂を少し上がり、横に進むとこま犬のすぐ目前へと進むことができます。
鎮座している2匹のこま犬のうち、右側の方は吠えるように牙を見せながら大きな口を開け、左側の方はそれとは対照的に歯を食いしばるように口を閉じています。それぞれのこま犬から感じるのは”動”と”静”のハーモニー。
右側から左側へアングルを変えて見ると、これまた先ほどとは異なる印象。食いしばったこま犬の”静”と、大きく口を開けているこま犬の”動”がより引き立って見えるようにも思えます。
こちらは真正面から眺めたもの。その巨大さや迫力を実感します。手前に、おーいお茶のペットボトルを置いてみましたが、それはこま犬の足の大きさにも及ばず、その巨大さは歴然としています。一体ペットボトル何本分の高さがあるのやら。(^^;
こちらは左真横から眺めたこま犬。足に着目してみますと、毛並みや足先など細かい部分まで造りこまれているようです。また、前足がぴんと張っているのが際立って見え、座っているためか後ろ足は少し窮屈そうにも思えます。
右側真横から眺めたこま犬。後頭部から背中、後ろ足まで描かれているうずまき模様が、こま犬らしさを引きだたせている印象を受けました。
また、世界一の美濃焼こま犬の足元には、小さなこま犬がたくさんいました。巨大なこま犬に付き従っている極小こま犬といったところでしょうか。
足元の台座には、このブログの研究対象でもある”夢”の文字。この世界一の美濃焼こま犬こそ、制作者が目指した”夢”であったのでしょうか。筆者にとってはこの世界一の美濃焼こま犬こそが、まるで夢か幻のようにも思われます…!
いままでいろいろな珍スポットを見てきたけど、大きさと言い、作りの細かさといい、陶芸でこんなこともできるのかっていう印象を受けました。
美濃焼こま犬の概要と作り方
この近くには世界一の美濃焼こま犬に関する概要説明板がありました。
それによると、この世界一の美濃焼こま犬は市政35年を記念して瑞浪市と高浜市は姉妹都市の提携を結んだのを記念として、市の文化財に指定されている大川窯四代目羽柴与左衛門度の美濃焼こま犬モデルとして制作されたというもの。「ふるさと創生1億円基金」および「とうしん地域振興協力基金」の配分が制作のための資金源になったということです。
そのようにして制作されたこま犬の大きさは美濃焼こま犬の中では世界最大ということで、高さ約3.3メートル、幅約1.56メートル、奥行約2.4メートル、使用された陶土は15トンにも及んでいます。
また概要説明版のすぐ隣には、「世界一の美濃焼こま犬制作過程」と題されたおおきな説明板があります。それには製作過程のカラー写真と説明文が書かれた陶器が設置されており、以下の通り14枚にわけて説明されておりました。
文字だけでなく写真も入っているため、美濃焼こま犬がどのようにして制作されていったかがよくわかります。以下に14枚の陶器に書かれたテキストを書き並べてみました。
STEP6:成型だけでも制作日数183日、STEP13:区民250戸が昼夜交替の総出で窯焚きなどの大掛かりな制作過程。現在、堂々たる姿で鎮座している巨大な世界一の美濃焼こま犬は、多くの地元区民により長い期間かけて制作されたのです。
また衝撃的であったのは、このこま犬はどこか他の設備が整った場所で制作されて運ばれたのではなく、この場所で陶土によりこま犬を成型し、窯焚きをして制作をしたという事実。STEP6にあるように、こま犬背後には、制作の際に使用した窯の一部(焚口2か所・煙道部)と、煙突の下部が残されています。
STEP9-10にあるように、窯は選り集められた不揃いのレンガをうまく組み合わせながら作られていたことが残されている焚き口からうかがえます。
さらに焚き口後の後ろには、制作時の排煙のために造られた煙突の一部。こま犬を上回る大きさですが、下部ということなので、当時はもっと巨大な煙突であったのでしょう、恐るべき美濃焼こま犬。
世界一の美濃焼こま犬は、他の場所から運ばれてきたのではなく、現在位置している場所に巨大な窯や陶土など用意して制作された。
まさかこの場所で制作したとは…
てっきり他の場所で作ったのを運んだんだと思ったわい。
近くの神社にもたくさんのこま犬たち
世界一の美濃焼こま犬のすぐ近くには神社があります。その名も八王子神社。この神社の境内にはたくさんの小さな美濃焼こま犬が鎮座しています。
まず神社を守るようにして鳥居の両サイドに座る2匹の茶色いこま犬。左側の方は大きな目や鼻、歯をむき出しにした口などなかなかの圧巻の表情です。
右側のこま犬は大きな目や鼻に加え、口を大きく開いているのが特徴です。両方サイドともこま犬よろしく行儀よく両足を揃えていますね。
また、境内脇の本堂へ向かう坂にも、積み上げられたレンガの台座上、そしてその上に設置された木製屋根の下で、たくさんのこま犬が祀られてされていました。
レンガの台座には、こま犬の絵と制作者の名前と思われる文字が彫られたプレートがはめ込まれていました。こま犬も埋め込まれたプレートも愛情こめて作成されているようですが、地元の方によるものなのでしょうか。
案内板などはなかったため、どのような由緒かはわからなかったのですが、世界一の美濃焼こま犬のすぐ横に位置するこの八王子神社も、こま犬と大きく関わりがあるようでした。
世界一の美濃焼こま犬に隣接する八王子神社にも、たくさんのこま犬が祀られている。
この神社とこま犬の歴史を、もっと詳しく調べてみたいわね。
まとめ
今回紹介した珍スポット・世界一の美濃焼こま犬は、神社や寺院では見慣れたこま犬から受ける印象とは大きく異なり、こんな巨大なこま犬があるのかという驚きを感じることができると思います。
美濃焼により制作されているということで、陶芸による珍スポットの一種としてもカテゴライズすることができますね。
わざわざこのためだけにドライブやツーリングへ出かけるもよし、土岐アウトレットモールなどとも近いのでショッピングついでに併せて行ってみるのもよいでしょう。
美濃焼により制作された国道結節点上のこま犬から感じるロマン、興味がある方はぜひ世界一の美濃焼こま犬へ!
- 世界一の美濃焼こま犬が鎮座するのは、国道363号と419号の結節点。
- 他の場所から運ばれてきたのではなく、現在位置している場所に巨大な窯や大量の陶土を用意して制作された。
- 世界一の美濃焼こま犬に隣接する八王子神社にも、たくさんのこま犬が奉納されている。
訪問日:2022年10月15日
詳細情報
- 住所 :岐阜県瑞浪市陶町大川716
- アクセス:JR瑞浪駅から9.6キロメートル/中央道瑞浪ICから11.9キロメートル
- 営業時間:24時間
- 休日 :なし
- 料金 :無料
- 駐車場 :なし
参考:あわせて行きたい!美濃の珍スポット
美濃の珍スポットといったら、他にもこんな場所が併せて行きやすいわね。
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